転ぶ

今日、学校の階段で転びそうになった。
そう言ったら「転びそうになった、じゃなくて転んだ、だろ」と指摘された。
常識を覆された気がして、目から鱗が落ちた。


「転ぶ」というのは、怪我をともなっていたり、地面とキスをしていたりして始めてそう呼べるものだと思っていた。
小学生のころ、転んで額から血をダラダラと流した経験からか、傷がなければ転ぶというほどじゃないと考えたのだ。
今日の私は別に足を階段に取られても怪我をすることがなかったので「転びそうになった」と表現した。
しかし改めて考えてみると、確かに今日のできごとは「転んだ」だったような気がしてくる。
私の「転びそうになった」発言はそろそろ年貢の納め時かもしれない。
いずれお蔵入りし、「転んだ」ばかりになるだろう。


ただ、些細なことでも転んだ扱いにしてしまうと、その原因を作る些細な奴らに負けた気がしてしまう。
勝敗の枠を超えて、階段とお話ができればいいのに。
階段さんにはライバルがいて、それは坂さん。
互いに切磋琢磨しあって尊敬するエスカレーターくんをともに目指している。
階段さんは自身が人の踏み台になることもいとわない心の広い良い子。
けれど悪い人に出会っちゃうと大変なことになる。
一段ごとの高さがマチマチだったり、段板が狭すぎたりと、美しいプロポーションではなくなってしまう。
坂さんは誰にも愛されることを目指してバリアフリーを掲げ、ボランティア精神旺盛な、これまた良い子。
でも怒ると急になって、人の息を切らして楽しむという悪魔的一面も持っている。


ひどく眠くて、さっきからずっと頭の中でうまい棒をもった少年とプリングルスを持った少年が追いかけっこしている。
決着はつきそうにない。


おやすみなさい。