森のくまさん

童謡というものには、都市伝説とか嘘みたいな話がついている場合が多い。
私は「森のくまさん」が気になった。


場所は森の中。
花が咲いてきれいではあるが、くまが出るほどだから人の手で管理されているような場所じゃないのかもしれない。
登場人物は、タイトルにもある「くまさん」と、そのくまに追いかけられる「お嬢さん」だけ。
この「お嬢さん」は一体どうしてこんなところに来たのだろうか。
森の中に咲く花を見たかったのかもしれない。
けれど、私はそうだとは思えない。


ここで「くまさん」の正体が重要になってくる。
果たしてコイツは本当に「くまさん」なのか。
森のくまさんの歌詞を見ると、お嬢さんに逃げるよう促し、追いかけ、落し物を渡して、最後にはお嬢さんから歌をプレゼントされている。


つり橋効果だかなんだか知らないが、もし仮に「くまさん」が本物の獣だとしたら「お嬢さん」の行為は無用心すぎるのではないか。
おそらくこの「くまさん」は「お嬢さん」の知り合いだろう。
そしてきっと、「くまさん」は男だ。


この童謡は、砂浜で追いかけあっている男女のカップルを森の中に移したものだと私は思う。
男は最初に「おじょうさん おにげなさい」(追いかけっこしようよ)と声をかける。
女はそれに従って逃げる。
当然男はそれを追い、いずれ追いつく。
そして男は白い貝殻の小さなイヤリングを女にプレゼントする。
喜んだ女は、それに歌でこたえる。


ではなぜ「くまさん」なのか。
「くまさん」は人を襲う、そのようなイメージがこの曲の歌詞には含まれている。
つまり、男が女を襲うことを意味している。
実際はおそらく同意の上だろうが、とにかく情事はあるはずだ。


なぜ浜ではなく森なのか。
カップルが追いかけっこするなら海辺の砂浜、と相場が決まっているようなものだが、この曲は森の中だ。
その理由は、男が「くまさん」であることから推測することができる。
森の中は、人目につきにくい。
隠れる場所もたくさんあるし、ことを行うには持って来いの場所と言える。


有名な童謡についてる話の類は、暗い話であることが多い。
だからこんなほのぼのとした童謡があってもいいはずだと思う。


おやすみなさい。