まおう

窓や屋根を打つ雨音が、『魔王』の馬の足音に聞こえる。


中学校の音楽の教科書に載っている『魔王』は、授業の中で特に印象に残って居る曲。
ゲームやマンガが好きな私のような人からすれば、『魔王』というタイトルそれだけで曲を聞きたくなる。
タイトルだけの段階で、印象付けには勝利している。
けれど、印象を残したのはタイトルだけにとどまらなかった。
中身にもインパクトがあった。
病の息子の「おとうさん、おとうさん」という必死な呼びかけや、その息子が最後には息を引き取ってしまうこととか。
始まりも、嵐の森を駆ける馬の足音が、まるでどこかのダンジョンのBGMのようで、興味を持たせるには十分すぎる内容。


雨音は人を不安にさせる。
でも、家の中に居るならその不安もだいぶ減る。
私の場合、むしろ安心とは違った気分の高揚が得られる。
自分が降られない分には、雨は晴れと等しく好き。



今朝は土曜日の風が吹いていたような気がする。
週休二日制が取り入れられる前の、午前で授業が終わる土曜日の風が。
懐かしかった。
そういう風を感じると決まって、部屋の窓を開け弟とスーパードンキーコング3の最初のステージをプレイしているところを思い出す。
あのステージの曲は、涼しい風にふさわしい。
なつかしさの正体は、涼しさだったようだ。


おやすみなさい。